第一話 三浦芳恵




1、




芳恵が37歳のとき、突然夫が倒れた。
夫は何も不摂生などなかったし、酒もタバコもやらない模範的な生活スタイルを形成していたが
これも運命なのか。
医師からは心臓の疾患により今までのような仕事はおろか
日常生活を送るにも支障をきたす容態のために、長期入院を余儀なくされてしまった。


保険からいくらかの入院費は出てはいたが、
夫が無収入で芳恵や3人の子供を養わなければいけない状況では
蓄えもすぐに底を尽き、そして入院費もままならぬ状態になってしまった。

夫は亭主関白ではなかったし、家族や自分に対しても常に優しい態度を
とってくれていた。経済的にも何不自由なく自分や子供達を
養ってくれていた恩もあり、自分でもどうにかしてこの状況を打破したいと
芳恵は心の底から思っていた。

元来芳恵は気性は荒くは無いが芯が強い部類に入る女性でもある。
その性格からか、すぐさま行動に出た芳恵はパートを
3つも掛け持ちをして、経済的に自分がこの家を支えようと思っていた。

しかし、今まで主婦の生活しか送ってこなかった芳恵には
少々この生活は厳しかった。
3つの職場を掛け持ちするということは体力的にはおろか
精神的にも気持ちの切り替えが必要になってくるし
憶えることも多々存在する。

37の中年に差し掛かった女性には少々荷が重過ぎるのは確かだった。

程なく芳恵も体を壊し、2週間の入院生活を送る羽目になってしまったのだ。


退院を果たしてからは、3ヶ月ほど今までの職場に顔は出してはいたが、
周りの人間の必要以上の気遣いは帰って芳恵にとっては重荷になるだけだった。

それに、いくらパートを3つも掛け持ちをしているとはいっても
所詮パートの稼ぎなど知れたもので今まで夫が家に入れてくれていた
金額の三分の一にもならなかった。

精神的にも、肉体的にも限界の時を迎えようとしていたその時
芳恵は働いていた缶詰工場の若社長に自室へくるようにいわれた。

どういう用件か芳恵は疑問に思わなかったが
部屋に入るなり、若社長は芳恵にこう切り出した。
その内容とは


「もっと金になる仕事を紹介する代わりに、自分の伽をせよ」


っというものだったのだ。
芳恵は困惑した。


いくら家族のためとはいえ、夫を裏切って他人に体を
預けるなどできない。しかし背に腹は代えられぬ。
今、夫の入院費がないと夫をむざむざ死なせることになるし
今までの夫に対する愛情も無為にしてしまうことになる。













そして芳恵は承知した。














其の夜、芳恵は1年ぶりに男と肉の交わりを行ったのだ。
精神的にも張り詰め、母として、妻として良き貞女を装ってきた
芳恵は自分が思っていた以上に肉の疼きが激しいことを自覚した。

そして、芳恵はその若社長の絶倫さも手伝ってなんと6回も
昇天させられたのだった。それも自分の視界が真っ白に
なるほどの絶頂を味わわされて。







だが芳恵は知らなかった。
その若社長の趣味とも取れる夜伽さえも実は先に芳恵が
所属することになる組織の面接試験であることを。







2、



そして、3日後。


芳恵は若社長に呼ばれ、自分が今から所属することになるであろう職場の
説明を受けることになった。


しかし、芳恵はその職場のあまりの破天荒さに驚きの表情を隠せなかった。
その職場で行われる行為とは、










「自分のような金銭的に貧窮状態にある肉の悦びを知った女性。
 それも主に人妻達を集め、局地で現場労働者達と一緒に作業をして
 更に夜をも共にする。」









ということだった。


表向きには女性の作業員ということだったが
その実態は労働力にならない人妻達を現場に派遣し
夜伽どころか、様様に特殊なシチュエーションで男と交わる
肉便器そのものだった。




芳恵は最初はあからさまな嫌悪の顔色を出し、
その場を立ち去ろうとした。しかし
若社長はこの前の芳恵との交合のビデオを既に
先方に回してしまったという返答が返ってきたのだ。


芳恵は愕然とし、その場で茫然と若社長の顔を見つめた。
しかし、若社長はニヤリと薄笑いを浮かべ、続けて芳恵に
こう切り出したのだ。


先方によると、芳恵のような豊満な肉付きをし、
更に其の容貌、立居振る舞いや交合のときの
あまりにギャップのある野獣の喘ぎを拝見し、
導き出した年間の報酬はなんと






1500万円ということだったのだ。






もちろんこの申し出を断っても構わないし、
先ほど撮影したビデオは責任を持って破棄するということだった。


だが、断れば今までのような単純労働を事務的にさせられ、
其の報酬はというと雀の涙ほどで、夫の入院費や
子供の生活費をも捻出させることができないものなのだ。


それに比べれば、多額の報酬が得られるこの売春婦の方が
魅力的であることは確かだったし、芳恵にとって恥としかいいようのないことだが
この前の若社長との床で肉の悦びを再確認させられたことで
自分自身の淫らな習性を存分にそこで開放できるのではないだろうかという
期待もあった。




だが、芳恵は、とても今は返事は出来ないということで
其の日夫の入院する病院へと足を運んだ。


夫は普段よりも幾分元気そうで芳恵と
暫くぶりに長話をした。心臓の疾患ということもあり
芳恵は夫とセックスはできない。だが医者に隠れて夫婦は
オスとメスの関係になり、挿入はしないまでも肉を求める
事があった。芳恵は夫の肉棒をしゃぶり、夫は芳恵の
乳房や性器を嬲ってやったりと。



そんな肉弄りをしばらく行ったあとに
夫はこんなことを切り出した。

それは、芳恵の欲求不満を満たすために
他の男と交わってきてはということだった。

芳恵と夫の絆は並みの夫婦よりも余程しっかりしていたが
そのために、夫は芳恵がいかに肉に飢えているか理解しているようだった。
しかも自分の入院費や介護、子供の世話を一身に背負い込んでいるために
相当な圧迫を味わっているのも既に見通されていたのだ。



そこまで見通している夫に芳恵はウソをつけるはずもなく
今から自分が置かれるであろう自分の立場を
包み隠さず夫に話した。
勿論、入院費が出せないと夫の命にかかわる。
夫が金銭的に負担になるだけではなく
精神的に、夫が生きていることで自分や子供達が
いかに心の支えになっているかということを理解して欲しい
ということだった。そのためにも自分の貞操を売ってでも
家族を養うことを許して欲しいということだったのだ。



そして、夫も暫く悩んだ末、
芳恵さえよければその仕事に取り組んでもよいという
許可を得た。
ただ、その心労が夫の病状にさしさわりが無いかどうかが心配ではあったが…。




そして、芳恵は人妻工員として家族のために
その体を開く決意をした。







そして1週間後、最初の派遣地に向かう途中、芳恵の体は股間から
淫水を溢れさせ、心とは裏腹な肉の悦びを期待していた。